[日記]高畑勲監督の訃報に

私くらいの年代の人間には、高畑勲と言えば間違いなくアニメ界のレジェンドだ。とりわけ代表作とも言える『火垂るの墓』は、自分の少年期における戦争観に対し『はだしのゲン』と並び強烈な影響を与えた作品だった。戦争はただひたすら弱い者から奪い、人間らしさを奪い、幼さからくる判断ミスにもまるで容赦などせず死の谷へと叩き落とす。原作は野坂昭如だが、その原作のメッセージが強く伝わるような演出に拘った職人だったと思う。

反面、興行的には実力に比べ見劣りする結果に終わってしまった。とにかくリアリティや原作の持つ魅力の表現にこだわったせいで、エンタメとして魅せる部分には余り力を入れなかったように見える。子供向けアニメとして放映された名作『赤毛のアン』などは、大人になって見てみると素晴らしく思えてくるのだけど、人生の経験がない子供がみてもその魅力はいまいち伝わらなかったんじゃないだろうか。

このOPは本当にすばらしいと思うんだ。
ただ私はリアルタイムで観ていない(そこまでの年齢ではない)ので、子供の頃これを見て感動したかどうか今となってはわからない。
でも大人になって初めてこのOPを観て、一瞬で心奪われたのはよく覚えている。ただ馬車がかけていくだけなんだけど、最初の影をバックにタイトルが表示されるシーン、白い花の道へ駆け入る時の鮮烈な映像、ただ後ろを振り返ってるだけなのに胸が締め付けられる感覚。この作品に参加していたのは、宮崎駿や富野由悠季、近藤喜文など錚々たるメンバーであり、その誰かが手がけたOPなのかもしれない。それでもこんな「なんでもないのに鬼気迫る」演出は、その後の作品をみるに高畑勲が監督だったからこそできたOPだと確信している。

次の金曜ロードショーで急遽『火垂るの墓』が放映されるそうだ。『火垂るの墓』は確かに名作なんだけど、追悼という意味ではちょっと違うかなという気はする。できれば『平成狸合戦ぽんぽこ』や『おもひでぽろぽろ』のような、前向きな作品の方が良かったんじゃないだろうか。あの人は職人だから、全力で『火垂るの墓』を映像化しただけで、代表作ではあるけどこれが高畑勲だ、とやるには相応しくないように思う。ぽんぽこやぽろぽろのような前向きさの方が、本来の人となりに合っているように思うので。

高畑勲監督のご冥福をお祈り申し上げます。素晴らしい作品をありがとう。


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