[映画]『ハドソン川の奇跡』

『ハドソン川の奇跡』をNetFlixで視聴。
映画ファンにはお馴染み、俳優にして映画監督であるクリント・イーストウッド作品だ。
2009年に旅客機の機体トラブルからニューヨーク・ハドソン川に着水不時着した実話を元にしており、乗客乗員全員が無事生還したことから”ハドソン川の奇跡”として知られ、「ああ、あの話か」となる人も多いだろう。

物語はハドソン川の奇跡を成し遂げた直後、機長は”英雄”として称えられている状況から始まる。
しかし当の本人はそんな喝采にも浮かない顔、なぜならこれから始まる”事故調査”の結果如何で「機長の判断は誤っていた。乗客乗員の生命を無駄に危険に晒した。」と裁定が下れば、一転世間からどのようなバッシングを浴びせられるかわからない立場にいたからだ。

つまりこの映画は、不時着までの経過を丹念に追うだけかと思えばさに非ず。
むしろその後の「事故調査~調査結果が判明」するまでの物語となっており、着水までの経過は回想という形で描写されることになる。

映画を観ている我々は「そんな馬鹿な!機長は誠実に職務を遂行したじゃないか」と思いながらも、冷徹に粗を探ろうとする事故調査官たちとのやり取りにヤキモキし、ハラハラしながら「一体どうなるのか?」気が気でないままクライマックスへ進むことになる。このあたりはさすがイーストウッド、手慣れている。

この事故調査の経過のどこまでが実話かわからないけれど、ニュースでは”無事着水した英雄物語”としてしか知らなかった私にとって、それだけでは話は何も終わっていない事を知る意味で非常に良い映画だった。
また、ともすれば世間からの評価が一変してしまう危うさの上に立っている事実にも空恐ろしさを感じた。
バーで機長向けられた暖かく敬意に満ちた視線や声援も、一夜にして冷たい、侮蔑に満ちたものに変わっていたかもしれないのだ。

(そのような例として、2015年のトランスアジア航空235便墜落事故がある。当初は機体トラブルにもかかわらず、市街を外して川へ墜落したと讃えられる声もあったが、機長の操作ミスが決定的な事故に繋がったと判明して評価は一変した。ただし、機長は事故時に亡くなっている。)

ドキュメンタリーやノンフィクション好きには是非観て欲しい作品だ。

個人的評価:★★★★☆

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